リュウノウギク

リュウノウギク Chrysanthemum makinoi


雪の少ない太平洋側でもいよいよ冬がやってきます。うちはまだ、冬を迎える心構えができていませんが、野山の植物たちは一足早く冬越しの準備ができているようです。どのような形で冬を過ごすかは植物によって様々です。種子や根だけのものもあれば地上部を出して越冬するものもあります。草刈が行われたり、今シーズンの地上部が枯れたりして、地上部を出して越冬するもののうち、特に根ぎわから葉をたくさん出して、地面にきれいに葉っぱを並べて冬を越すタイプが目立つようになりました。

このように地面にきれいに並んだ葉を「根生葉(こんせいよう)」といいます。身近なところでは、タンポポの葉を思い浮かべてもらえるとわかりやすいでしょうね。根生葉は一見、茎がないように見えますが、ちゃんと茎はあるんです。地上に出ている茎はごく短いもので節間がほとんどないために、根から直接葉が出ているように見えるだけなのです。また、「根出葉(こんしゅつよう)」あるいは「ロゼット」ということもあります。英語では、「radical leaf」 または「rosette」です。

写真はリュウノウギクの根生葉です。右側に一本細い棒が見えますが、これが、今シーズンの茎だったものです。花期は10月〜11月が標準ですが、もうこの株にはほとんど茎だけしか残っていませんでした。葉には毛が密生しているので、白っぽく見えます。夕日で輝く姿は、日本のシルバーリーフプランツって感じです。

葉の裏面にはさらに毛が密生しているのですが、その毛の状態はちょっと変わっています。葉からまっすぐ一本毛が伸びるのではなく、細い毛の中央からごく短い柄が出て葉についた状態になっているんです。こういう毛のことを「丁字状毛」といいます。

リュウノウギクは、本州の東北南部〜四国、九州に分布し、日当たりのよい丘陵地や山地に生えている多年草です。葉をもむと「竜脳」に似た香りがするので、その名前がついています。

学名は図鑑によって異なるものが採用されていますが、
米倉浩司氏・梶田忠氏 (2003)「BG Plants 和名−学名インデックス」(YList),http://www.bg.s.u-tokyo.ac.jp/bgplants/ylist_main.html(2004年11月30日).
によりますと、Chrysanthemum makinoi Matsum. et Nakaiが標準で、Chrysanthemum japonicola MakinoとDendranthema japonicum (Maxim.) Kitam.は異名として取り扱われています。

「Chrysanthemum」はキク属で、 chrysos(黄金)+anthemon(花)に由来しているのだとか。ちなみに、リュウノウギクの花(舌状花)は白色です。

【和名】リュウノウギク [竜脳菊]
【学名】Chrysanthemum makinoi
【科名】キク科 COMPOSITAE
【撮影日】2004/11/28
【撮影地】山梨県富士吉田市

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2004年11月29日

フジオトギリ

フジオトギリ Hypericum erectum var. caespitosum


フジオトギリは、「オトギリソウ(Hypericum erectum)」の1変種で、その名のとおり富士山や周辺の御坂や秩父山地に生える多年草です。オトギリソウが草丈30cm程度までなるのに対して、フジオトギリの草丈は10cm程度で、「そう生」します。全体にオトギリソウより小型です。ちなみに、「そう生する」というのは、茎が根もとから束のようになってたくさん出ていることをいいます。

オトギリソウの仲間には、花、葉や茎に「腺体(せんたい)」という点々に見えるものがあるのが特徴の1つですが、この特徴は似た種類を見分けるときにも使われます。ただし、いろいろと個体差があることも多くて、種類を特定するのが難しいときもあります。それも色素を含んだ黒点だけならわかりやすいのですが、色素を含まない明点の有無も見るため、葉っぱを日に透かして調べなければなりません。真夏にそれをやると立ちくらみを起こしそうですよ。

今回の写真のフジオトギリの個体では、ガクと葉には明らかに黒点があるのがわかりました。花期は7月〜9月で、色は黄色、花弁は5枚です。

写真は、フジオトギリの花が終わって、果実ができている状態です。赤くてピーナツのように見えるのが果実です。花もきれいですが、果実も観賞できる植物ですね。お花屋さんではもっと大きいヨーロッパや北アメリカ原産の種類(Hypericum androsaemumHypericum inodorumなど)がよく「ヒペリカム」という名前で売られています。もっとも、そちらの品種はずっと華やかで、果実はつやつやしていて、ぜんぜん印象が違いますけれど。

ところで、フジオトギリの学名は、「Hypericum erectum Thunb. var. caespitosum Makino」です。「Thunb.」はThunberg(ツュンベルク)で、オトギリソウの命名者、「Makino」は牧野富太郎で、変種のフジオトギリの命名者です。

「Hypericum」はギリシャ名でhyperikon(hypericon)と呼ばれた植物にちなむそうで、hypericonはキランソウなのだとか。日本にある「キランソウ」はシソ科で濃い紫色の花をつける植物ですから、ギリシャのキランソウという植物は、日本のキランソウとは別物なのでしょうね。「erectum」は直立したという意味で、「caespitosum」はそう生のという意味ですから、やはりその姿をあらわした学名がつけられていますね。

【和名】フジオトギリ [富士弟切]
【学名】Hypericum erectum var. caespitosum
【科名】オトギリソウ科 CLUSIACEAE (GUTTIFERAE)
【撮影日】2004/09/16
【撮影地】山梨県山中湖村

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2004年11月27日

イヌタデ

イヌタデ Persicaria longiseta


イヌタデは、日本全土の田畑、道端や荒れ地などでふつうに見ることができます。草丈はふつうだと20cm〜40cmぐらいの一年草です。似たような種類には、オオイヌタデ、サナエタデ、ハルタデ、ハナタデなどがありますが、見分ける最大のポイントは、「托葉鞘(たくようしょう)」の状態ではないでしょうか。

「托葉鞘」…少々難しそうな言葉ですので、まず、「托葉」から説明します。托葉は、葉の柄が茎についている部分(葉柄の基部)にある葉のようなものです。植物の種類によって大きさもさまざまで、形もトゲ状、巻きヒゲ状、 鱗片状だったりといろいろです。とくに、スミレ類の観察では必須のチェックポイントとなっていますね。

その托葉が、タデ科の場合、鞘(さや)のようになって茎をつつむ形になります。それで、「托葉鞘」といいます。イヌタデの托葉鞘は筒形になっていて、筒の長さは8mmぐらいです。そして筒の上部(筒の縁)には筒と同じくらいの長さの長い毛が生えています。

アスファルトの歩道のでこぼこにわずかにできた土壌、そこに生えた1株。丈は2cm。すでに赤紫色の蕾を膨らませています。すでに草刈が行われた斜面のすぐ近くだから、夏の間に咲いた株にできた種から芽生えたものかもしれません。こんなに小さくてもイヌタデの特徴である「托葉鞘の縁の剛毛」がちゃんとありましたよ。

別名は、小さくて赤いツブツブの花を赤飯に見立てて「アカマンマ」といって、子どものままごとの遊びになるくらいですから、やはりその花に目がいきますけれど、ぜひ今度は「托葉鞘」をチェックしてきてください。ちなみに、うちは子どものころにこれで遊んだ記憶はありません。みなさん遊んだものなんですか〜?

ちなみにイヌタデの「イヌ」は、似ているけれど違う、役に立たないという意味の接頭語です。植物の名前には「イヌ」とついているものがたくさんあります。「イヌ」がつい種類はだいたいよく似たほかの種類が有用なもので、それに比べてこの種類は役に立たないということで、そう呼ばれてしまっていますね。イヌタデの場合も同じ仲間の「ヤナギタデ」の葉には独特の辛味があるのに対して、イヌタデには辛味がないことからきているそうです。

図鑑によって学名はPolygonum longisetumだったり、Persicaria longisetaだったりしますが、はじめはPolygonum属だったものが、あとからPersicaria属に変更になったからです。Polygonum属のときは、タデ科の植物の多くを広く含んだ形でしたが、より細かく分類してPersicaria属となったようです。「longiseta」は、このままでは辞典に載ってないので、恐らく「longius→より長く」+「seta(saeta)→剛毛」という感じで、その「托葉鞘」の特徴からきているのではないでしょうか。

【和名】イヌタデ [犬蓼]
【学名】Persicaria longiseta (Polygonum longisetum)
【科名】タデ科 POLYGONACEAE
【撮影日】2004/11/23
【撮影地】東京都日野市

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2004年11月26日

ウツギ

ウツギ Deutzia crenata


ウツギは、北海道、本州、四国、九州の山野に生える落葉低木です。5月〜7月ごろ、芳香を漂わせ真っ白に咲き誇っていたウツギも、本格的な冬を前にした今はこんな状態です。分厚い感じの葉は黄色に変色しつつもまだ完全には落葉していませんでした。でも今の主役は果実。色はナシですが、りんごあめのような果実がよく目立っていました。1つのあめの大きさは、直径5mmぐらいですけどね。

葉は長さ5cm〜10cmぐらいの先のとがった細長い卵形 (図鑑には「卵状披針形」とか「卵状長楕円形」などと書いてあると思います。)で、2枚対生(たいせい)します。「対生」というのは、茎の同じところから2枚葉が向き合ってついている状態のことです。葉の縁のギザギザ(鋸歯:きょし)は浅いものですが、どことなくゴワゴワする感じがします。その正体は、表面に生える星状毛。質が厚いうえに星のような形をした星状毛がたくさん生えているので、触るとザラザラしますよ。

花は円錐状の花序にたくさん咲き、花序は垂れ下がる感じになります。白い花弁は5枚です。特に雌しべに注目すると、多くのユキノシタ科の植物の特徴として、複数の花柱のある雌しべを持つということがあります。ウツギの場合だと花柱は3〜4個です。写真ではちゃんと写せていませんが、かなり目をこらすとあめの中央には2〜3本、棒がたっているのがわかるかな〜。その棒が花柱です。ちなみに雄しべは10本。

ウツギ(空木)という名前は、茎が中空になっていることからきています。別名、ウノハナ(卯の花)。有名なあの歌に歌われているウノハナ(卯の花)ですね。学名は、「Deutzia crenata Sieb.et Zucc」です。「Deutzia」はウツギ属で、オランダのJ.van der Deutzという人に捧げたものだそうで、「crenata」は円鋸歯状のという意味です。円鋸歯状…葉のギザギザがあまり深くならない様子からきているのでしょうね。「Sieb.et Zucc」は命名者の名前で、Sieb.はPhilipp Franz B.von Siebold(シーボルト)、ZuccはJ. G. Zuccariniという植物学者です。

【和名】ウツギ [空木]
【学名】Deutzia crenata
【科名】ユキノシタ科 SAXIFRAGACEAE
【撮影日】2004/11/23
【撮影地】東京都日野市

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2004年11月25日

クジャクアスター

クジャクアスター Aster cv.


クジャクアスターは、別名を宿根アスターやクジャクギクなどという、キク科Aster属(アスター属またはシオン属)の多年草です。冬になると地上部は枯れますが、耐寒性があるので地中の根は生きていて、春にはまた新たに芽を出します。こういう生活をする植物を「宿根草」といいます。

北米やヨーロッパ原産のいろいろな種類が様々に交配されて、欧米ではたくさんの品種があるそうで「ミカエルマス・デージー」とよばれています。クジャクアスターという名前は、1つの種類をさすわけではなく、さまざまに交配されてできた品種群の総称です。

日本では、ちょっと前までは、近い種類で背丈の低い「ユウゼンギク」の鉢ものや、クジャクアスターでは白花の「シロクジャク(白孔雀)」の切花をみることが多かったですよね。最近は庭に植えられたクジャクアスターをよく見るようになりましたけれど。それもかなりの大株で。地植えにすると草丈が1mぐらいになり、たくさん枝分かれして、すごい量の花を咲かせます。一株だけでもそこがいっぺんにお花畑のようになって、それはもう美しくて見事なものです。

ちなみに、属名の「Aster」はラテン語で星という意味です。1つ1つの花は、直径2cm程度で小さいものですが、株いっぱいに咲く様子は夜空の天の川のようです。というより、「クジャクアスター」って名前なんだから、クジャクが羽を広げたように美しいといった方がいいのでしょうか?確かに、そのボリューム感はクジャクが羽を広げたようなっていう感じもありますが、9月〜10月ごろに咲く花の色は、白、ピンク、薄めの青紫など優しい感じのものが多いんですよね〜。

写真では、花が終わってしまっているので、花の美しさはまったくわかりませんが、茎の流れ方や細かい葉の端正な形は美しさはわかるんじゃないかと思うんです。うちは上手に写せませんが、写真撮影がお好きな方はぜひ花の終わったクジャクアスターにもチャレンジしてみてはいかがでしょう!

【一般名】クジャクアスター [孔雀アスター]
【別名】宿根アスター、クジャクギク[孔雀菊]、
クジャクソウ[孔雀草]
【学名】Aster cv.
【科名】キク科 COMPOSITAE
【撮影日】2004/11/23
【撮影地】東京都日野市

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2004年11月24日

コニシキソウ

コニシキソウ Euphorbia supina


コニシキソウは、北アメリカ原産の帰化植物です。茎は上には伸びず地面をはいます。茎の長さは10cm〜20cmほどの一年草です。道端や田畑、荒れ地に普通に見られ、花は6月〜10月に咲きますが、小さくとても地味です。茎にはたくさんの白っぽい毛が生えるので、ふつう、茎は白っぽいような灰色っぽいような色をしています。赤っぽくなることもありますが、写真にあるほどではないでしょうね。

この赤さは、、、本当にコニシキソウか〜?

茎が赤く葉の模様が目立たない場合、在来種の「ニシキソウ(Euphorbia pseudochamaesyce)」が候補にあがります。ニシキソウの場合だと、茎にほとんど毛がないことと果実が無毛です。写真の個体は、現地でジロジロ見たところ、果実に白っぽい寝た毛があり、茎にも毛がたくさんあっったことから、「コニシキソウ」としました。

生えていたのはアスファルトの歩道の脇なんですが、遠くからでもその地面の赤さがわかるほどでした。正直に言うと、コニシキソウがこんなにニョロニョロと伸びて、こんなに真っ赤になるなんて、ビックリしたと同時にちょっと気持ちわるい感じもしました。

実際に野外で見られる植物の姿は様々です。生えている環境や季節によっても違いますし、生育過程によってもいろいろと変化していきます。似たような種類がある場合、なかなか名前がわからないことも多いですよね〜。そのたびに図鑑とにらめっこ。その繰り返しで、見分けるポイントがわかってくるのだと思います。

ちなみに、学名の「Euphorbia」は、Euphorbusというローマ時代の医師にちなんでいるとか。この医師がはじめてEuphorbia属の(コニシキソウではない)植物の乳液を薬として使ったのだそうです。「supina」は平臥した(横になる)という意味だそうで、おそらく地面にはう姿からつけられたのでしょう。

また、よく似た仲間の「オオニシキソウ (Euphorbia maculata)」は、茎が斜め上か、まっすぐ上に伸び、全体に大きいので区別は簡単です。すでに、当ブログで登場済みですので、あわせてご覧いただけるとうれしいです。

■当ブログ内関連記事
オオニシキソウ

【和名】コニシキソウ [小錦草]
【学名】Euphorbia supina
【科名】トウダイグサ科 EUPHORBIACEAE
【撮影日】2004/11/23
【撮影地】東京都日野市

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2004年11月23日

キツネノマゴ

キツネノマゴ Justicia procumbens


キツネノマゴは、国内では本州、四国、九州に分布しています。道端や田畑の脇などでふつうに見られる一年草です。草丈は10cmぐらいの小さい草のイメージですが、30cm前後までなることもあります。

キツネノマゴ…とても変わった名前ですが、残念なことに由来はよくわからないそうです。花が子ぎつねの顔に見えるからという説も確証がないといいます。

一方、学名はというと、Justicia procumbensという学名の命名者は、Carl von Linne (リンネ 1707-1778)です。リンネは「分類学の父」と呼ばれ、生物の学名を属名と種小名の2語(おもにラテン語)で表すという「二名法」を最初に提唱した人物です。リンネによって命名されたってことは、人間がこの植物にはじめて学術的な名前をつけたのは1700年代ということなんですね〜。

ちなみに、「Justicia」はキツネノマゴ属をあらわしていて、18世紀のスコットランドのJ.Justiceにちなんでいるとか。「procumbens」は、平伏のという意味だそうです。

花期はふつう8月〜10月で、色は薄ピンクで、長さ1cmに満たないくらいの花を咲かせます。花の形はシソ科やゴマノハグサ科と似ていますが、こういう形の花を「唇形花」といいます。シソ科とは、子房や果実の形で区別され、ゴマノハグサ科とは果実の中の種子の数などで区別されています。

キツネノマゴの果実にはふつう4個の種子ができ、熟すと果実が二つに裂けて中の種子がはじけ飛びます。種子にある柄(種柄)によって種子がはじき出されるのです。小柄な植物ですけど、1mぐらいは種子を飛ばすそうですよ!

今回の写真は普通に咲いているようですけれど、10日ほど前に草刈が行われた場所で咲いていたものです。主軸は刈られてしまったようですが、地面近くの脇芽は運よく花茎の部分は刈られずにすんだようです。葉に傷を負いながらも逆に背丈の高い草がなくなったことで、光を十分得て再び花開いているようでした。丈はこれで、2〜3cmぐらいです。

【和名】キツネノマゴ [狐のまご]
【学名】Justicia procumbens
【科名】キツネノマゴ科 ACANTHACEAE
【撮影日】2004/11/23
【撮影地】東京都日野市

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2004年11月22日

シオガマギク

シオガマギク Pedicularis resupinata


シオガマギクは、ゴマノハグサ科の多年草で日本では北海道〜九州の低地帯〜亜高山帯の明るい草地に生育しています。世界的に見ると東アジアに広く分布していますが、特に日本国内では、形態的な変異が多くて、いくつかの変種があるといいます。

例えば、本州中部の亜高山帯には、花冠が巴状になる「トモエシオガマ(Pedicularis resupinata var. caespitosa)」、東海地方の低湿地には、葉が小さくて花や葉の色が濃い感じの「ミカワシオガマ(Pedicularis resupinata var. microphylla)」があります。

変種も含めた葉緑体DNAを使った最近の研究からは、葉緑体DNAのタイプが9種類あることがわかったそうで、タイプの分布はある程度地理的なまとまりがあるのだそうです。そして、国内のシオガマギクにしかないDNAのタイプもあることがわかったとか。つまり、葉緑体DNAのタイプだけをみると、同じシオガマギクでも地域によって違うものである場合があるわけです。DNAのお話は少々難しい部分がありますが、わからないなりにも、何となくその種がたどってきた歴史や系統なんてことにも想いをはせるのでした。その種がそこに存在していることの意味。。。う〜ん、奥深いですな〜。

シオガマギク属の植物は、半寄生性の植物で、イネ科やカヤツリグサ科などの植物の根に寄生しているといわれています。筆者としては、その様子を確かめてみたいところですが、この仲間の多くが高山植物ということで根を掘るわけにはいきません。その様子は周りの状態から想像するのみです。

いろいろと不思議な感じの植物だと思うのですが、その名前の由来も変わっています。花は薄ピンク〜濃い赤紫色で美しく、葉の形は扇風機の羽のようにねじれたようなプロペラ状で、とてもユニークです。葉の縁のギザギザ(鋸歯)も独特で、紅葉もすることから、「花が美しく葉まできれい」ということで、「葉まで」→「はまで」→「浜で」きれいなものは「塩竈」だそうで、「シオガマギク」という名前になったといいます。この植物を見て、この名前をつけるなんてまったく思いつかないですよ〜。

ちなみに、「しおがま(塩竈/塩釜)」というのは、海水を煮て塩をつくるかまどやかまのことだそうです。「かまが美しい」といわれてもピンとこないのですが、塩竈を使って製塩する光景が美しかったということなのでしょうか。

また、ときどき「宮城県塩竈市」との関連が書かれてあるのをみるのですが、この植物の名前の由来との関係はよくわかりません。ただ、この植物が高原に多くて、砂浜には生育していないということだけは明らかですね。

【和名】シオガマギク [塩竈菊]
【学名】Pedicularis resupinata
【科名】ゴマノハグサ科 SCROPHULARIACEAE
【撮影日】2004/09/16
【撮影地】山梨県山中湖村

■Trackback
ごまのはぐさのこまごまことのは」さんの記事「しおがまぎく 塩釜菊 ゴマノハグサ科」にトラックバックのお返しをさせていただきました。

posted by hanaboro at 19:27| 東京 ☀| Comment(2) | TrackBack(2) | 花後図鑑 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2004年11月20日

ホロムイソウ

ホロムイソウ Scheuchzeria palustris


ホロムイソウという名前、何となく聞きなれない感じがしますよね。それもそのはずで、1科1属1種の植物なんです。つまり、「ホロムイソウ科」という1つの科の中に「ホロムイソウ属」という属が1つあってその属に分類される種が「ホロムイソウ」だけということなわけです。1科1属1種ということ自体はそれほど珍しいことではないのですが、この植物の生育地は低山〜亜高山の湿地ということで、マイナーな感じがするかもしれませんね。

世界的に見ると周北極地域(北半球の広い範囲)に広範に分布しています。国内では北海道と本州近畿以北の分布ですが、近畿地方がこの種の南限地です。花は6月〜7月、本州ではちょうど梅雨の時期ですし、筆者はまだ花にはお目にかかったことがありません。草丈は10cm〜20cm程度で、何とも地味なんですけれど、分類学的には単子葉の中ではかなり原始的なものなのだといわれています。チャンスがあれば、ぜひジロジロと観察させてもらいたいと思っているところです。

写真は、ホロムイソウの果実(袋果)ですが、花からは想像できないような変わった形です。3つの袋がくっついていて1つの長さは8mmぐらいです。花の仕組みをまだよく理解できていないので、どういうふうにこれができるのか、今のところ筆者にとっては謎。

夏の尾瀬ではこういう写真のような姿がたくさん見られますが、小さい草の間からこれが見えると、最初はギョギョっとするかもしれません。小さいなりに主張している感じ。

ちなみに、名前は北海道の石狩の「幌向(ホロムイ)」の湿地で最初に発見されたことにちなんでつけられたそうです。

【和名】ホロムイソウ [幌向草]
【学名】Scheuchzeria palustris
【科名】ホロムイソウ科 SCHEUCHZERIACEAE
【撮影日】2004/08/12
【撮影地】福島県南会津郡檜枝岐村

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2004年11月19日

ホトトギス

ホトトギス Tricytis hirta


ホトトギスは、北海道、本州、四国、九州の山地に生える多年草です。茎はほとんど枝分かれせず30cm〜1mぐらいの長さになります。茎はまっすぐ上に立ち上がるのではなくて、よく斜面などから垂れ下がって伸びています。

花は8月〜9月、葉の脇(葉腋:ようえき)に1個か2個つきます。花が開く前の蕾のときはよくわからないのですが、バナナの皮をむくように花が開くと花びら(花被片)の内側に赤紫色の斑点がたくさんあって驚かされます。これは、この仲間にだいたい共通する特徴ですね。花の名前も、その斑点が鳥のホトトギス(不如帰)の胸の模様に似ているということからきているそうです。

ほかにもいろいろと種類があって、黄色い花を咲かせるものもありますが、このホトトギスとよく似ている日本の野生種は、「ヤマジノホトトギス」と「ヤマホトトギス」ではないでしょうか。よく似てはいますが、この3種類は花が咲いていれば、比較的簡単に見分けることができます。

そこで、花びらに見える部分(花被片)に注目します。バナナの皮をむいたときのように花被片がだら〜んと垂れ下がっていたら(反り返っていたら)、「ヤマホトトギス」です。花被片が水平だったら、「ヤマジノホトトギス」。花被片が斜め上を向いていたら、「ホトトギス」です。

写真は、ホトトギスの果実ができはじめている状態で、花被片はまだ落ちずについています。中央に見える黄緑色の若い果実の上には、雌しべも残っています。雌しべの先は深く三つに分かれて、さらにその先はそれぞれ二つに浅く裂けます。写真では三つにわかれるところまでしかわかりませんが、ポツポツと突起のようなものがついているのが見えます。

ここでは花も終わっていて部分的にしか観察できませんでしたが、ホトトギスは雄しべの様子もとてもおもしろいので、次回どこかで見つけたときには、じっくり観察してみてくださいね!

【和名】ホトトギス [杜鵑草]
【学名】Tricytis hirta
【科名】ユリ科 LILIACEAE
【撮影日】2004/09/16
【撮影地】山梨県山中湖村

posted by hanaboro at 19:04| 東京 ☔| Comment(10) | TrackBack(2) | 花後図鑑 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2004年11月18日

コセンダングサ

コセンダングサ Bidens pilosa


コセンダングサは、熱帯アメリカ原産とする説と、原産地ははっきりしないが熱帯〜温帯に広く分布するという説があるようです。日本には江戸時代に入ってきたのだそうです。コセンダングサの仲間は、いろいろと変異が多く、図鑑をみると種内のいくつも変種が書いてあります。図鑑によっても出てくる名前が違っていたりして、ゴチャゴチャします。

もともとは、日本になかった帰化植物ですが、現在では北海道〜九州まで見られるそうです。道端、荒れ地、河原などにふつうに生えています。花期は9〜11月、「舌状花(花びらにみえるもの)」がなくて、黄色い「筒状花(管状花)」のみです。コスモスでいうと、まわりの白やピンクの花びらがなく、真ん中の黄色い部分だけの状態です。何だか、「好き、嫌い」といいながら、花びらを全部とってしまった後のようです。

それが、変種の「シロノセンダングサ(Bidens pilosa var. minor)」になると、白い舌状花(花びら)が数個つくようになって、花らしく見えるようになります。コセンダングサ〜シロノセンダングサ(コシロノセンダングサ)までの変異はいろいろで、雑種もあるといいます。

今回の写真は、蕾なのでこれだけではわかりませんが、咲いているものを見ると小さくて白いものがまわりにありました。ちゃんとした花びらにはなっていませんでしたが、こういうものが、シロノセンダングサとの雑種といわれるものなのかもしれません。まあ、変種レベルのお話なので、あまりこだわらなくてもいいのかもしれませんけどね。

種子の先端には、トゲが3本〜4本あって、全体の長さは1cm前後です。さらにトゲや種子の表面には細かいトゲがたくさん生えていて、それによって人の衣服や動物のからだにくっついて、種子が運ばれます。いわゆる「ひっつきむし」の一種なんですね〜。

ところで、写真の蕾ですけれど、どことなく「コスモス」に似ていませんか?ふつうのコスモスは「Cosmos属」ですが、「ウインターコスモス」はセンダングサと同じ「Bidens属」、「チョコレートコスモス」は「Bidens属」だったり「Cosmos属」だったりです。属同士かなり近縁なのでしょうね。

■ここのブログでは、「キバナコスモス」についてはすでにご紹介していますので、よかったらそちらの方もご覧いただけたらと思います。(ちなみに、キバナコスモスはCosmos属)

キバナコスモス・コスミックレッド
キバナコスモス・レモンツイスト

【和名】コセンダングサ [小栴檀草]
【学名】Bidens pilosa
【科名】キク科 COMPOSITAE (ASTERACEAE)
【撮影日】2004/11/09
【撮影地】東京都日野市

コセンダングサの花やひっつきむしについては、またいつかレポートしたいと思っています!

posted by hanaboro at 19:59| 東京 ☔| Comment(5) | TrackBack(1) | 蕾図鑑 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2004年11月17日

メドハギ

メドハギ Lespedeza cuneata


メドハギは、日本全土に分布し、日当たりのよい草地や、道ばたに生える多年草です。茎の下のほうが地面をはうように伸びているものは「ハイメドハギ(Lespedeza cuneata var. serpens)」といいます。草丈は50cm〜1mほど。8月〜10月、秋の七草として脚光を浴びる「ハギ」の仲間と同じころ、花を咲かせていますが花は白っぽくて小さいので、ちょっと目立たないかもしれません。

写真では、花は終わっていて果実ができています。一番てっぺんに見えている茶色くてへん平なものが果実(豆果)で、中には1つだけ種子が入っています。

メドハギという名前は、占いにこの茎を「筮(めどぎ)」として使っていたことからきているそうです。筮というのは、50本の細い棒のことで、のちには竹で作られるようになったので、「筮竹(ぜいちく)」というそうです。よく枝分かれしますが分かれた枝は細く短いので、その短いものを50本集めて使ったのでしょうか。

マメ科の植物ですので、根には根粒菌が共生しているので、空中窒素の固定が行われます(このあたりは、中学の理科で習うかも)。そのため、やせた土地を豊かにするために用いられます。田植え前のレンゲ畑もその活用例です。メドハギの種子も工事後の法面に吹き付けて緑化に活用されていますが、種子がまったく違う場所から持ってこられるるという点で、問題点も指摘されているようです。詳しくは、下記のサイトさんでチェックしてくださいませ。

■「岡山理科大学・植物生態研究室(波田研)のホームページ」
メドハギ
植物生態研究室(波田研)のホームページトップ


メドハギの場合、法面緑化に用いられる種子が外国産ということで、国内の同じ種との交雑で、すでに遺伝子汚染が起こっている可能性があるようです。最近のニュースで問題となった、クマのためにドングリを集めてクマに与えるという活動ですが、同じ国内産のドングリとはいえ、異なる地域からドングリを運ぶことは、ドングリの遺伝子汚染の可能性を否定できません。しかし、森の奥で悠々と暮らすことが出来なくなって、人里に下りてこなければならないクマも悲しい。それを何とかしたいと思う人たちの気持ちもわかります。一体どうすればよいのでしょうか。

【和名】メドハギ [蓍萩・目処萩]
【学名】Lespedeza cuneata
【科名】マメ科 LEGUMINOSAE
【撮影日】2004/11/09
【撮影地】東京都日野市

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2004年11月16日

オオニシキソウ

オオニシキソウ Euphorbia maculata


オオニシキソウは、北アメリカ原産の帰化植物です。よく似た仲間には、在来種の「ニシキソウ(Euphorbia pseudochamaesyce)」、同じ北アメリカ原産の帰化種の「コニシキソウ(Euphorbia supina)」などがあります。この仲間は茎が赤くなる傾向があって、葉の緑色とのコントラストが印象的なことから「錦」にたとえて「ニシキソウ」と名づけられたそうです。

オオニシキソウは、明治時代には日本に入っていたらしく、1903年に山梨県で発見されたのが最初だとか。草丈20cm〜50cm程度の一年草で、ニシキソウやコニシキソウより大きく、茎は直立するか斜めに伸びてよく枝分かれします。

道端や荒れ地などでごくふつうに見られますが、地面にへばりつくように広がるコニシキソウがかなり雑草的な様子なのに対して、オオニシキソウはややクールな感じ。一見すると葉の形はふつうの楕円形ですが、よく見るとちょっと変わっています。靴の中から取り出した中敷やスリッパの裏側みたいな感じなのです。茎につくもとの部分が左右対称ではないからなんですね〜。

花は6月〜10月。枝先にトウダイグサ属特有の花序をまばらにつけます。その花序をちょっと難しめにいうと「杯状花序(はいじょうかじょ)」といいます。写真では、すでに花の時期は終わっていて、丸っこくて赤くなっているのが果実です。果実は3つの部屋に分かれていて各部屋に1つずつ種子が入っています。

茎などを傷つけると白い乳液が出ます。クリスマス前に大量に飾られる「ポインセチア」と同様です。ポインセチアの花や果実もなかなかおもしろいので、ぜひ観察してみてくださいね〜。

【和名】オオニシキソウ [大錦草]
【学名】Euphorbia maculata
【科名】トウダイグサ科 EUPHORBIACEAE
【撮影日】2004/10/25
【撮影地】東京都日野市


結局、今年はポインセチアの日長処理をしなかった。しかも、いまだに外に置きっぱなしだ〜。それでも少しずつ色づいてきています。ただ、花は春になっちゃうかもしれません。いいかげん、室内に入れてやらないと。。。

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2004年11月15日

マルバルコウ

マルバルコウ Ipomoea coccinea


マルバルコウは、熱帯アメリカ原産のつる性の一年草です。よく似た種類の「ルコウソウ」と同じように、かなり古い時代(1850年ごろの渡来らしい)から観賞用に栽培されていたといいます。現在では栽培されるほか、本州中部以南の主に暖かい地域で帰化しているのが見られます。

花期は8〜10月、大きさは直径2cmぐらいで形は五角形、色は朱色です。葉は先がとがったハート型です。よく似た「ルコウソウ」は葉が細かく切れ込んで、魚の骨のように見えるので、区別は簡単です。茎には毛がなくツルッとしています。アサガオと同じヒルガオ科の植物で、双葉に時期なんかは、おなじみのアサガオとそっくりです。

一見、花も小さく華奢な印象ですが、よく枝分かれしかなり広い範囲につるをからませて伸びるため、トウモロコシ畑などでは問題の雑草となっているそうです。

写真は、夏にできた種子がこぼれて発芽し、何とか冬を前に花をつけられた株のようです。ツルは20cmぐらいしかありませんでした。駐車場の脇でひっそりと開花した後、しぼんだ状態を写したものです。

【和名】マルバルコウ [丸葉縷紅]
【学名】Ipomoea coccinea (Quamoclit coccinea)
【科名】ヒルガオ科 CONVOLVULACEAE
【撮影日】2004/11/09
【撮影地】東京都日野市

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2004年11月13日

ヌカキビ

ヌカキビ Panicum bisulcatum


ヌカキビは、北海道〜九州に分布しています。古くから雑穀として栽培されていた「キビ」と同じイネ科キビ属(Panicum)の一年草です。茎が細長くて花序が垂れ下がるので、全体的に弱々しく繊細に見えます。でも意外に草丈は伸び、1m前後までなります。

イネ科の植物の花のつくりはちょっと変わっています。細かくいうと、かなり専門的な言葉が出てきてしまいます。それが、イネ科の植物の名前を調べる関門にもなっていると思います。ということで、今回のところは細かいことは置いといて大まかな感じでいきます。

写真では垂れ下がった穂の先の方に小さいプツプツがついていますよね。これが小さい花(小花)だったものです。すでに花時期は終わって果実になっていましたけれど、この小花がたくさんついて1つの「小穂(しょうすい)」と呼ばれる花序になります。そしてさらに小穂がたくさん集まって穂ができているんです。

ヌカキビの場合、小穂が小さいということで、それを「糠」にたとえて、その名がつけられたといいます。しかし、「糠にたとえる」って?糠というのは、玄米を精米するときにでる種皮や胚芽のことですよね〜。たとえるというよりは、「ヌカ」とつけることで、キビに似ているけど「細かい」とか「役に立たない」とかいう意味をあらわしているのかなと思ったりします。まあ、こういうのをたとえるというのかもしれませんが。

少し湿り気がある場所を好むようですが、そこら辺の草地や林縁でふつうにあるので、ふだんはただの「草」という感じで通り過ぎてしまいそうです。でもこのときは夕日を浴びてピカピカひかってきれいでした。

【和名】ヌカキビ [糠黍]
【学名】Panicum bisulcatum
【科名】イネ科 POACEAE
【撮影日】2004/10/25
【撮影地】東京都日野市

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2004年11月12日

ヘクソカズラ(No.3)

ヘクソカズラ Paederia scandensヘクソカズラ Paederia scandens
2004/11/05
2004/11/09
ヘクソカズラ Paederia scandens
きれいにオレンジ色になったヘクソカズラ

Paederia scandens


このブログではこれまでに2度この植物が登場しています。今回はヘクソカズラの今の様子をレポートしようかなと思っていたんですけど、どうしても気になるのがその名前です。「最初に名前をつけたのは、いったい誰なのか」…これはきっと、この名前を知ったみんなの疑問ではないかと思うんです。わたしも誰なのかなんてわからなかったし、ちょっと調べてみようかなっと、まあ軽い気持ちだったんですけど、これを調べるのは難しくて。。。はずかしいのですが公表します。

ということで、一応、ヘクソカズラの簡単な説明です。

ヘクソカズラはアカネ科ヘクソカズラ属の植物です。東アジアに広く分布し、日本でも全土でごくふつうに見られるつる性の多年草です。ものすごい名前は、この草のもつ独特の臭気からきています。その文字から推測するほどの悪臭とまではいかないですが、真夏の蒸し暑い時期などは草にしてはかなり臭い方のにおいがします。そのにおいにをかぐと他の植物と間違えることはないでしょう。


■過去2回の記事もあわせてご覧いただけるとうれしいです。

ヘクソカズラ
ヘクソカズラ(No.2)

野生の植物の名前を図鑑で調べると和名のほかに学名が載っていることがあります。学名は国際的な規約に基づいてつけられた世界共通の名前です。一般的な多くの図鑑ではヘクソカズラの学名は「Paederia scandens」となっています。少し専門的な図鑑だと、「Paederia scandens (Lour.) Merr.」というふうに書かれています。

「Paederia」は属名(ぞくめい)でラテン語のpaedor「汚れ、汚物」に由来し、「scandens」は種小名(しゅしょうめい)で、「よじ登る」という意味があります。そして「Paederia scandens」でひとつの種をあらわしています。

このように、「属名+種小名」の組み合わせによって生物の種をあらわす方法を
二名法」といいます。この方法を最初に提唱したのは、スウェーデンの植物学者カール・フォン・リンネ(Carl von Linne)です。

学名の後にはその命名者の名前がつづきます。( )の中の人が最初の命名者です。「Lour.」はLoureiro、「Merr.」はMerrillという人の名前の略記です。このように学名を詳しく見ると、その植物の分類学的な名前の変遷を知ることが出来ます。

これは推測ですが、最初の命名者Loureiroはどうもこれを、Gentiana scandensと命名したようなんです。「Gentiana(Gentiusという王の名前からきているとか)」…つまり、リンドウ属の植物として発表したようなんですね。それをあとから、Merrillが「Paederia」に属を変更したようです。調べた内容と学名からはこんな感じに読み取れました。

ということで、においから連想する名前(Paederia)をこの植物に与えた最初の人はMerrillということになるのかな。しかし、日本人ではないので、命名の際に標準和名(1つの学名に1つ定めた和名)はつけていないでしょう。といっても、学名と和名はまったく別のものなのだから、こういうお話は今回はまったく関係ないはずでした。今のところ標準和名はしっかりと定まったものではないようですが、今後は、1つの学名に対して1つの標準和名を決める方向のようです。


では、「ヘクソカズラ」という和名はいったい誰がつけたのでしょう?

ヘクソカズラは、万葉集の中でもすでに「くそかずら」で登場して、各地の方言でも「へくそばな」とか「くそねじら」などといわれていたとか。つくづく散々な言われようです。

リンネが二名法を提唱したのは1700年代。一方「くそかずら」といわれるようになったのは万葉のころ。その後いつごろから「へくそかずら」になり、定着したのかはわかりませんが、学名よりは歴史が長かったようですね。別名に「サオトメバナ」、「ヤイトバナ」などがありますが、万葉集にこれらの名前で登場したという話はきいたことがないです。

現在、一般的な図鑑では、「ヘクソカズラ」がごく当たり前に使われていて、「サオトメバナ」や「ヤイトバナ」は別名として付記されていることが多いと思います。でも、「ヤイトバナ属ヤイトバナ」で掲載し、「ヘクソカズラ」は別名扱いになっている図鑑もありました。もし、属和名も含めて「サオトメカズラ」や「サオトメバナ」をトップで掲載している「植物図鑑」がありましたらぜひお知らせくださいませ。

「和名」というものが、だいたい学術的に定めらたものでなくて慣用的にそういわれるようになったものなので、どれを採用しようがいいのでしょう。あまりにかわいそうな名前だから、今後「サオトメカズラ」や「サオトメバナ」とたくさんの人が呼び続けて、こちらの方が広く一般的になれば、後世では「ヘクソカズラ」とはあまり呼ばれなくなるのかもしれません。

しかし、思うんです。その名前でなかったら、特にこの植物に注目したり、名前を覚えたりしないんじゃないかって。だって、花はかわいく見えまけど、蔓がはびこって厄介な雑草ともいえますから。

まあ、結論としては、「ヘクソカズラ」と最初に命名したのは誰なのかは、はっきりわからなかったということです。しいて言うなら、万葉集で
皀莢(そうきょう)に延(は)ひおほとれる屎葛(くそかずら) 絶ゆることなく宮仕へせむ

と詠んだ「高宮王(たかみやのおおきみ)」がその名を公にしたということでしょうか。しかし、この段階では、まだ、「くそかずら」です。その後、「へ」まで付け加わってしまっています。

方言(地方名)もそうだと思うのですけれど、その独特のにおいに気づいた人たちが、何となくそう呼んでいたのが定着していったということなんでしょう。しかし、「ヘクソカズラ」という名前を広く世間に植えつけた人はきっといるはず。日本の学者さんだと、中井猛之進さんや原寛さんを疑っていますが、まったく確証はありません。

結局なんだかわからないのに長々とすみませんでした。これは学名とか調べるのではなく、方言とか民俗学とか薬草とか、そちらの方からのアプローチがいいのでしょうね。

【和名】ヘクソカズラ [屁糞葛]
【学名】Paederia scandens
【科名】アカネ科 RUBIACEAE
【撮影日】2004/11/09
【撮影地】東京都日野市


[追記]
もしご存知の方がおられたら教えていただきたいのですが、よく属名の「Paederia」がラテン語の「paidor(悪臭)」が語源だとありますよね。しかし、手持ちの「羅和辞典」と「植物学ラテン語辞典」には「paidor」が載ってないのです。だから、「paedor(汚れ、汚物)」としているのですけれど。本当のところはどうなのでしょう。

[余談]
ヘクソカズラの花の色、あれ、何かに似ているっと思いながらもずっとわからなかったんですが、思い出しました。それは、樹木にくっついている白いカイガラムシをこそぎ落としてひっくり返したときの色だった。ギャ〜!

posted by hanaboro at 21:53| 東京 🌁| Comment(2) | TrackBack(1) | 花後図鑑 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2004年11月11日

ニラ

ニラ Allium tuberosum


写真はニラの花の後、果実ができてその袋がはじけて黒い種子が見えているところです。ニラはいうまでもなく、私たちがいただいているあの野菜のニラです。独特の強いにおいがあって、スタミナ野菜としておなじみですね。

ニラの分布については、もともとはアジア東部〜インドやパキスタンあたりに分布していたものが、万葉集や古事記にも登場するほど古い時代に、日本に渡来し栽培されてきたという説が一般的のようです。ただし、本州や九州で河原や草地に生えているものなどは自生種だともいわれています。

花の時期は6月〜10月。長い花茎の先に小さく清潔感のある真っ白の花をたくさんつけます。花自体にはニラのにおいはないですし、食用ではなく花を見るために栽培してもいいほどきれいです。花びらは6枚に見えますが、3枚の花弁と3枚の苞からできていて、非常に整った形をしています。ユリ科の多年草ですが、種子でもよく増えます。子どものころ、うちの庭でも勝手に生えて毎年花を咲かせ年々増えていました。

さて、ニラといえばやはりにその強いにおいですが、原因は「硫化アリル」という物質で、ビタミンB1の吸収をよくし肉のくさみをやわらげる効果があるといいます。このにおいがうまみのもとなんですよね〜。さらにカロチンやビタミンAが豊富で、カゼの予防にもなるから、これからの季節も活躍しそうですね。また漢方では種子を乾燥させたものを「韮子(きゅうし)」といって胃腸薬として使うのだとか。最近おなかの調子がよくないから試してみたいところですけど、写真の個体には2〜3個しか種子がありませんね〜。これでは足りないぞぉ〜!

【和名】ニラ [韮]
【学名】Allium tuberosum
【科名】ユリ科 LILIACEAE
【撮影日】2004/11/09
【撮影地】東京都日野市


■Trackback
管理人さんの想いがいっぱいつまった、デザインもとても素敵なブログ
→「グラスの中のビー玉」by びおびおさんの記事「この間のニラ。

ニラの種つながりで、トラックバックしま〜す!

posted by hanaboro at 21:18| 東京 🌁| Comment(7) | TrackBack(2) | 花後図鑑 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2004年11月10日

オオアレチノギク

オオアレチノギク Erigeron sumatrensis


オオアレチノギクは、南アメリカ原産の帰化植物です。よく似た種類に「ヒメムカシヨモギ(Erigeron canadensis)」がありますが、花と茎を見るとだいたい区別できます。オオアレチノギクの場合、花びら(舌状花)がほとんど見えなくて茎には長く外に伸びる毛がたくさん生えています。それに対して、ヒメムカシヨモギは、小さいけれど花びらがしっかり見え茎の毛はまばらです。

両者は根生葉(ロゼット:地面にはりついて、バラの花のように葉を広げた状態)で越冬するので、この冬はぜひ、ロゼットの観察をしてみましょう。本格的な冬まで待たなくても、早い時期に出来た種子はすでに発芽しているので今でも見られますけどね。今なら種子が採種できるので、播いて芽生えを観察してもよいかもしれません。ただ、帰化植物をわざわざ育てるのもなんですし、花を咲かせるころには草丈1m〜2mぐらいになりますのでご注意!

花期は7月〜11月。横枝がたくさん長く上に伸びだして、さらにその枝は細かい枝がたくさんできて大きな円錐型の花序が出来ます。花序にはこれまたたくさんの花(頭花)がつき、種子も大量に出来ます。あまりの花数の多さに、数える気力を失いますね〜。相手は私よりでっかいときもありますしね。

1つの花(頭花)は、直径4mmぐらい、写真の綿毛(冠毛)の長さも4mmぐらいです。綿毛の色は真っ白ではなくて、薄い褐色です。特に見たくはないかもしれませんがその名のとおり、荒れ地で大群落を見ることができます。春先の若い苗の葉っぱのつき方や枝の張り方や色、新鮮な時期の花など、それなりに見所はあると思いますが、大きくなるにつれ、葉もうどんこ病にかかってきちゃなくなっちゃうし、旺盛な繁殖力からできる大群落はやっぱりやっかいものですよね〜。

【和名】オオアレチノギク [大荒れ地野菊]
【学名】Erigeron sumatrensis (Conyza sumatrensis)
【科名】キク科 COMPOSITAE (ASTERACEAE)
【撮影日】2004/11/09
【撮影地】東京都日野市

■Trackback
よく綿毛つながりでトラックバックしてくださるひなっぺたさんに、ようやく綿毛のトラックバックのお返しです。センスのいい温かみのあるお写真もいっぱいのブログ
ひなっぺた通信さんの記事「アザミのふわふわたち

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2004年11月09日

ベニバナボロギク(No.2)

一日前の記事「ベニバナボロギク」にいただいた知三朗さんと花鳥風月@gooさんからのコメントを見て、改めて、この植物の今を見つめてみようと思いました。葉や茎中心の内容になっていますので、花がないときに探す参考にしてもらえたらと思います。

ということで、もう一度「ベニバナボロギク」です。

前日の記事では、この植物の持つ歴史ゆえに切ない気持ちで書きましたが、今日はやっぱりこの植物は「帰化植物」なんだってことを、再確認しながら書いています。

ベニバナボロギク Crassocephalum crepidioides
夏の間咲いて、じゅうぶんにボロボロな姿を見せた後、上のほうは茶色になってもう枯れてしまったかに見えていた株が、下の葉の脇から芽を出して、さらに開花までしていましたよ。


ベニバナボロギク Crassocephalum crepidioides
それに草丈20cmぐらいの幼植物にもちゃんと蕾が見えていました。これならじゅうぶん冬までに開花を迎えられるでしょうね。


ベニバナボロギク Crassocephalum crepidioides
付近には、左の写真のようにもっと草丈の低い苗もありましたが、こちらも大丈夫なのかもしれません。この小さいものは、丈が5cmあるかどうかぐらいですけどね。


茎の色は、緑色に紫色が入ることがありますが、入る度合いには個体差があります。特に若い株だと毛がたくさん生えていて、白っぽく見えます。その毛は株が古くなると脱落してしまって、白っぽさはなくなるようです。

ベニバナボロギク Crassocephalum crepidioides
左は若い株の茎です。この個体の場合は特に葉柄の付け根あたりが紫色になっていて、他の部分にはランダムにところどころ紫のまだらが入っています。茎は円柱状ではなく角ばっていて、弾力性がある感じです。写真ではわからないですが、細かい毛がたくさん生えているんですよ。


ベニバナボロギク Crassocephalum crepidioides
株が古くなると茎の毛はなくなって、かなり色が濃くなるようです。もともと紫がたくさん入る個体だったからかもしれませんが、下部の葉の脇から出た新しい茎はあまり紫色になっていませんでした。


葉には毛がたくさん生えていて触ると、何だかモサモサ、ガザガザした感じです。柔らかさもありますが、見た目以上に厚みを感じます。見た目は葉がだら〜んとなっていて質が薄そうなんですが。

ベニバナボロギク Crassocephalum crepidioides
表面は濃く深みのある緑色で、中央の脈を中心に紫がかっています。特に葉柄の付け根付近にはたくさん毛が生えているので、角度によっては白っぽく見えます。


ベニバナボロギク Crassocephalum crepidioides
裏面は、個体によって違うようで紫色のこともあれば、ほとんど白いこともあります。といっても、左の写真では強引に葉をねじって横から葉の裏を写したので、よくわかりませんね〜。


ということで、11月9日現在少なくとも東京の多摩地域では、「ベニバナボロギク」はそれなりに芽生え生長し、開花もしていることのようですね。それにしても、「ベニバナボロギク」…たくましかった。その生命力の強さを垣間見た夕暮れでした。

【和名】ベニバナボロギク [紅花襤褸菊]
【学名】Crassocephalum crepidioides
【科名】キク科 COMPOSITAE
【撮影日】2004/11/05
【撮影地】東京都日野市

■当サイト内関連記事
ベニバナボロギク

■Trackback
詩的で楽しく絶妙な表現でその世界に引き込まれる素敵なサイト「図鑑:花鳥風月」さんの記事→「紅花襤褸菊

posted by hanaboro at 21:14| 東京 ☀| Comment(5) | TrackBack(0) | 葉っぱ図鑑 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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