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イヌザクラは、本州、四国、九州に分布し、山野に生える落葉高木です。高さは10m〜15mくらいになります。樹皮は白っぽくて、一般的なサクラと同じように、「皮目(ひもく)」という隆起したものが横に並んで、縞模様になっています。皮目は呼吸が行われているところです。
葉は互生。長さ10cmくらい、やや細身の長い楕円形で、先の方は細くとがる感じです。表面には毛があり、縁のギザギザ(鋸歯)は小さく細かく入っています。花は葉が展開した後に開花します。
サクラの仲間ではありますが、一般的なサクラとはいろいろと様子が違っています。サクラの仲間は、ふつう、葉柄に「腺点」という密腺が小さい突起がついていますが、イヌザクラの場合はそれが、葉柄ではなくて、葉身の部分の下の方に見られます。鋸歯と同じような感じなので、葉柄にある場合より目立たないかもしれないし、わかりにくいこともあります。同じ木の中でも何枚かの葉をチェックしてみると見つかるかもしれません。
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花期は4月。前年度に伸びた枝から総状花序を出して、たくさんの花を咲かせます。写真の状態では、まだ蕾のついた花序は短いので、枝と花序が接近して見えるのでわかりにくいのですが、イヌザクラの場合は、花序自体には葉がつかないんです。花が開くころは、花序の長さは、5cm〜10cmほど。果実が熟すころは、もう少し長めの印象です。
1つ1つの花の直径は、5mmちょっとくらい。花弁は5つ、多数の雄しべは花弁より長くて突き出しています。花序全体としてみると、大きな試験管ブラシのようです。
同じように総状の花序に白い花をたくさんつける「ウワミズザクラ」より、ちょっとおとなしめ。ウワミズザクラの場合は、今年伸びた枝の先に花序が出ます。これが重要ポイントで、花がついている下(花序の付け根)のあたりを見て、葉があったら「ウワミズザクラ」、なければ「イヌザクラ」というふうに見分けられます。
果実はやや先が細くなりますが、ほぼ球形で、黄色→赤色→黒紫色というふうに変化します。1つの花序(果序)で、熟す時期がばらばらなようで、いろんな色が混じって見られることもあります。
イヌザクラは、一般的な図鑑などを見ると、「ソメイヨシノ」や「ヤマザクラ」などと同じサクラ属(Prunus)に分類されていて、学名は「Prunus buergeriana」となってていることが多いと思います。この場合は、サクラ属がかなり広くとらえられています。より細かく分類した場合には、日本に生育するサクラの仲間は、スモモ属(Prunus)、サクラ属(Cerasus)、ウワミズザクラ属(Padus)、モモ属(Amygdalus)、アンズ属(Aemeniaca)、バクチノキ属(Laurocerasus)などとなるようです。この場合、イヌザクラの学名は「Padus buergeriana」です。
【和名】イヌザクラ [犬桜]
【別名】シロザクラ
【学名】Prunus buergeriana (Padus buergeriana)
【科名】バラ科 ROSACEAE
【撮影日】2005/04/15
【撮影地】東京都日野市
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別名のシロザクラのほうが趣があるかな?
三宅
こんばんは。
あまり、目新しい内容ではないですが、お楽しみいただけて何よりです。イヌザクラ、広い意味ではサクラの仲間ですけど、ずいぶん印象は違いますよね〜。「腺点」のお話、学生のころにすでに学んでおられてのですね。学校で、腺点なんて教えてくれるんですね。うらやましいです。
シロザクラ、趣あるかもしれませんが、ウワミズザクラに比べると、白いけどそこまで白さが際立つというわけでもないですからね〜。それに白いサクラの仲間なんてのもいっぱいあるし、どうなんでしょ。。。
【追伸】
忘れていましたが、別名のシロザクラは、花色に由来するのではなくて、老木になってくると樹皮が白く剥がれるところからきているのかもしれませんです。すみませんでした。