2005年05月30日

キツリフネ

キツリフネ Impatiens noli-tangere


キツリフネは、北海道、本州、四国、九州に分布し、山地の沢沿いや湿り気の多い林内などに生える一年草です。草丈は50cm前後。葉は互生。長さ5cm内外の楕円形で、縁のギザギザ(鋸歯)は粗く、ウネウネとした波状。

花期は6月〜9月。葉の脇(葉腋)から花序が垂れ下がって、花はそこからさらに細い花柄で吊り下げられたような状態で咲きます。色はやや淡い黄色。「ツリフネソウ (Impatiens textori
)」の場合、花の後ろ側に伸びるシッポのような「距」の先がクルッと巻いているのですが、キツリフネの距は、下向きに垂れ下がります。その距のついているふくらんだ袋状の部分は、3枚のガク片のうちの1つです。残りの2つのガク片は小さい。花弁も3枚ありますが、そのうち下の2枚がくっついて大きくなっています。

キツリフネは、開花初期のころ、通常の「開放花」に先がけて長さ2mm〜3mmの小さな「閉鎖花」もつけます。閉鎖花の方は、花が開かずに結実します。閉鎖花によってまず、確実に種子を作っておこうという堅実さを持っていたのですね。小さな個体では、より閉鎖花をつける確率が高く、花粉を運んでくれる昆虫がこなくても、少ない資源で確実に種子を残すようにと、うまくできていますね。

さらに開放花は、雄しべが雌しべより先に成熟する「雄性先熟」で、成熟する時期をずらすことで、自家受精をさける仕組みを持っています。開放花を咲かせるからには、遺伝的な多様性が高くなるように他家受精によって種子を作り出そうということのようです。

果実は「さく果」で、熟すとちょっと触っただけでも、パンッと弾けて中の種子が飛び散ります。それが、この仲間、ツリフネソウ属の学名「Impatiens (耐えられない)」の由来ともなっています。

キツリフネ Impatiens noli-tangere
まだ子葉が残っている。

葉は互生しますが、「子葉」は丸くて先が少しへこんだ形で2枚対生。子葉つまり双葉ですから、まあ、対生しているのはふつうのことですが、雰囲気は同じ属で、小学校などの教材としてもおなじみの「ホウセンカ (Impatiens balsamina)」にちょっと似ています。でも、生えているのがやや陰湿なところだし、ホウセンカよりはもっときゃしゃな感じ。もうしばらくは、子葉が残っているかもしれませんが、生長とともに子葉はなくなってしまいます。子葉の観察は幼殖物ならではのこと。今のうち。。。

【和名】キツリフネ [黄釣舟]
【学名】Impatiens noli-tangere
【科名】ツリフネソウ科 BALSAMINACEAE
【撮影日】2005/05/29
【撮影地】神奈川県藤野町

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posted by hanaboro at 21:08| 東京 ☔| Comment(4) | TrackBack(0) | 芽生え・幼植物 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
こんにちは。
今日ぐーぐる中にちょうどキツリフネの花を見かけたんですよ。Touch-Me-Notって紹介されてました。さすがはホウセンカ系。
http://www.southeasternoutdoors.com/flora/flowers/wildflowers-bsf.html

来週キツリフネのテリトリーに行く予定なので、子葉、探してみますね♪
Posted by cacho at 2005年05月31日 00:17
hanaboroさん、おはようございます。
キツリフネ、大好きです。
一度タネを庭に蒔いてみたことがあって、そのまま忘れていたのですが、春になって見慣れない双葉が生えてきたのがお写真と同じ姿でした。
奈良には狭い地域に、3種のツリフネソウ属の植物の生えるところがあります。不思議なことに住み分けをきちんとしていて、沢に近いところからツリフネソウ→ハガクレツリフネ→キツリフネというように生えています。
Posted by つぶら at 2005年05月31日 07:06
*cachoさん*

こんにちは!
そうそう、「Touch-Me-Not」ですね〜。学の「Impatiens」は「耐えられない」、種小名の「noli-tangere」は「触ることを欲しない、つまり触らないで」ってことで、その果実がちょっとした刺激で弾けるようす、よくあらわれてますよね〜。和名は花が「帆掛け船を吊したような形」って方からきてますけどね。

子葉。ヒョローっとしてますけど、植物の子葉って、やっぱりかわいいものですね〜。

外国の野草。おもしろいですね。「Yellow Trillium」の葉っぱの模様がカタクリみたいだった〜。もしや、cachoさん海外進出?
Posted by hanaboro at 2005年05月31日 11:26
*つぶらさん*

こんにちは〜!
うわ〜、すみわけのお話、おもしろいです。そういう生態的なこと興味津々です。3種が近くでみられるっていいですね〜。ハガクレツリフネは、もう15年くらい野生のものを見てまないんです。四国でちらっと見たことがあるだけで。襲速紀要素の植物、どこか特別なもののような、そんな印象を持ってしまいます。

子葉の写真、ピンボケでした。これ一枚しか写してなかったので、もう、エイヤーと載せてしまいました。でも、おかげで、つぶらさんのお話がうかがえて、よかたです。
Posted by hanaboro at 2005年05月31日 11:42
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