2005年07月09日

ササバギンラン

ササバギンラン Cephalanthera longibracteata
2004/06/15 若い果実

ササバギンランは、北海道、本州、四国、九州に分布し、山地や丘陵地の雑木林などに生える多年草です。茎はまっすぐのびて、草丈は20cm〜50cmほど。数枚の葉が互生します。葉柄はなく基部は茎を抱きこむようにつきます。同じような場所に生え、よく似た「ギンラン (Cephalanthera erecta)」よりもふつうは大きめです。

下部の葉は、幅の狭い長楕円形。長さは5cm〜15cmくらい、先はとがっています。その名の通り、「ササ」の葉を思わせるような葉です。茎の上部では「苞葉」となりますが、ほとんど葉と同じような形状の2枚ほどは、長く上方にのびて場合によっては、花序よりも長く突き出していることがあります。「ギンラン」の方は多くの場合、苞葉が短いので、花序は葉よりも上に突き出しているのがふつうです。平行に走る葉脈が隆起して、シワのように見えます。

写真にはまったく写っていませんが、茎には線状に突き出たような「稜」があって、それに沿って細かい毛が生えています。そして、花序や子房の部分にも細かい毛があります。さらに、葉の縁や裏面にも細かい毛があって、この点も「ギンラン」との区別点となっています。ギンランの方は茎や葉に毛がありません。

ササバギンラン Cephalanthera longibracteata
2004/04/30 茎の下部の葉

花期は5月〜6月。茎の上部の花序に数個つきます。花の長さは1cmちょっとくらいの白色。先端が少しだけ開く程度で、平たく開くことはありません。「外花被片」3枚と「内花被片」3枚がありますが、外花被片はガク片にあたるもので、内花被片のうちの2枚は「側花弁」といい、残りの1枚はかなり形の違う「唇弁」です。唇弁のつけ根には短い「距」があります。

6月半ばにもなれば、若い果実が見られます。梅雨の雨に打たれて背の低い個体は、葉も果実もドロをかぶっていることもしばしば。筆者の近辺、関東のとある丘陵地では、ササバギンランは、同属の「キンラン」に比べると、個体数が少ないわけではないかもしれません。でも、多様性の高い個体群を維持するには、十分な個体数ではなさそうです。写真は昨年(2004年)のものですが、今年も運よく果実をつけた個体がありました。熟した果実から大量に出される種子のうち発芽から開花個体にまで生長できる数は、ごくわずかなもの。野生のランの1個体がどれほど貴重なものなのか、泥まみれの若い果実を見ながら、改めて胸に刻むここ数年の梅雨時です。

【和名】ササバギンラン [笹葉銀蘭]
【学名】Cephalanthera longibracteata
【科名】ラン科 ORCHIDACEAE
【撮影日】2004/06/15
【撮影地】東京都

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■Trackback People : 野草people

posted by hanaboro at 20:37| 東京 ☔| Comment(12) | TrackBack(2) | 花後図鑑 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
hanaboroさん、初めまして!いつも楽しみに拝見させていただいております。

「多様性の高い・・・・十分な個体数ではない」という文章に大変惹かれました(⌒‐⌒)

残っていれば良いというわけではなく、増やせば良いというわけでもない。きちんと説明することは難しいのですが、盗掘の現場に出会う度に、残された自然と人との関係を思い悩みます。

応援しています(^O^)/
Posted by yellow_river at 2005年07月10日 23:31
*yellow_riverさん*

ようこそ、お越しくださいました。
本当、そうですね〜。野山の花たちに出会って、しばらくその美しさに見とれた後、ふと思い浮かぶのは、その行く末。ある1種類のシンボリックな存在の生き物だけが残ればいいわけでもないし、また、それを残し続けるためには、多くの生き物たちが十分に生活できる環境が必要なんですよね〜。

こんなことを考えつつも、ふだんの自分は、自然環境にすごく配慮した生活をしているとはいえませぬ。ますます、頭の中はゴッチャゴチャ。本当、難しいですね。こんな状態ですが、これからもよろしくです。
Posted by hanaboro at 2005年07月11日 10:44
こんにちはです。
ササバギンランって素敵ですよね〜。

私のたまに行くところでは林道を歩いてると結構な密度でコケイランやギンラン、ササバギンラン見つけられます。どちらかというとギンランの方がこちらでは少ないかなぁ。
こういうものはいつまでも残っていて欲しいですよね。
Posted by こー at 2005年07月12日 12:08
*こーさん*

こんにちは!
お返事、遅くなってしまってごめんなさいね。
さすがですね。北海道。本州だと結構、奥深いところに行かないと、コケイランは出てこないですよ〜。しかも、わたしの見たことある場所では、そんなに密度は高くないです。

キンラン、ギンラン、ササバギンランは、丘陵地の小さな緑地にあるにはあるけれど、この先どうなることやら、という状態です。こちらでは、ササバギンランとギンランの数は同じくらいかなあと思います。
Posted by hanaboro at 2005年07月13日 09:35
hanaboroさん こんばんは。

実は私は野生ランについては
意識的に避けてきたんです。
いろいろ相反する思いがあって・・・。

でもこの記事とコメントを読んで、
とても考えさせられました。
Posted by ごまのはぐさ at 2005年07月14日 01:47
*ごまのはぐささん*

自分の記事をご覧いただいて、いろいろ考えてもらって、それで記事にまでしていただけたなんて、とても光栄です。ありがとうございます。ようやく、ブログらしくなったかななんて。

野生ランとの接し方はとてもデリケートな部分がありますよね。自分の場合も、やっぱり野生のラン科植物をアップすることには、ためらいがあります。他の植物以上に淡白に掲載してきました。

自分のところは図鑑的要素の強いサイトなので、もっと詳細に植物の生き様や現状を記し、力強く意見を述べてもいいのかもしれません。でも、実際に記事を書くときになると、難しくて、ランについては、いつもヒリヒリとするものをおさえられずにいます。避けて通りたいような。

ごまのはぐささんのブログでの取り上げ方には、自分のところ以上に、とても難しい面があるのではないかと推察します。サイト上で難しい部分は、またいつかメールなどでもお話できたらなと思ったりもしていますです。
Posted by hanaboro at 2005年07月14日 19:02
また、お邪魔します。

盗掘されていることや絶滅の危機に瀕しているという現状をこうして読む機会があることは、ささやかでも世の中への警鐘となっているように思います。
Posted by hanahana at 2005年07月15日 00:12
*hanahanaさん*

お越しいただいて、ありがとうございました。

特にラン科植物に象徴されることなのですが、少なくなっているというような現状を記すことは、警鐘となることもあれば、一部では逆効果になることもあったりするんですよね。それで、Web上で不特定多数の方がみることの可能な状態での掲載には神経を使ってしまいます。あえて記事にしていることへの批判もあるかもしれません。中途半端で至らない記事ですが、読んでくださった方が何かを感じてくださるのならというささやかなものでした。

自分は、まだ考えの甘いところが多くて、今は、こうしてご意見をいただいて、考えを深めていきたいと思っています。コメント、感謝いたします。
Posted by hanaboro at 2005年07月15日 10:53
*hanaboroさん*

お体の具合はいかがでしょうか?
こちらもこの数日暑さで意識が朦朧として、掲示板まで注意がいきませんで失礼いたしましたm(__)m。

ご意見・ご相談事・いつでも大歓迎です!!
私自身、どこまで踏み込んでいいのか悩むことは本当に多いです。
たとえば野生ランを育てている方はクロアジサシさんのように、高いモラルを設定されているかたが殆どなのに、一部の方のむちゃくちゃで野生ラン愛好家=悪、のような構図になってしまいがちですし・・・。
私自身の理解や知識が足りないのも悩みのタネです。

とりあえずでは。
お体くれぐれもお大事に。

Posted by ごまのはぐさ at 2005年07月15日 18:52
*ごまのはぐささん*

どうもどうも、ご心配いただいて、ありがとうございます!記憶にある中では最高の熱を出してしまいました。でも、ほとんど平常に近づいていますので、もう大丈夫です。ごまのはぐささんもお気をつけくださいね。

そうなんですよね。野生ラン愛好家がすべて悪者になってしまうような図式が、確かにありますね。子どものころから感じていました。

もし、差し支えなければなのですが、ごまのはぐささんが感じておられる、その相反する思いということの一端でも、お聞かせいただけたらなと。ごまのはぐささんの記事やコメント欄など拝見させていただいたのですが、よくわからなかったものですから。あっ!いえ、その、ちょっと気になっちゃっただけなので、流していただいていいのです。
Posted by hanaboro at 2005年07月15日 19:53
お、なんかすっきりしましたねー。
涼しげでいいですねー。
体調は戻られましたでしょうか?

私の記述が不十分で偏っていることは、心ある人なら苦々しく見ていられるだろうなとは思っているんです・・・。そのくせ態度はどっちつかず。

相反する思いは、全ての野草に対してあるのです。
たとえば野にあるものは、野で愛でてこそ美しいというのは全くの正論で、私もそう思うのですが、何事もそんな単純ではないですよね。
帰化植物を、純粋な意味で野草と呼べるのか?あるいはスキー場を純粋な意味で「野」と呼べるのか?
園芸種と野生種を選別する根拠とは何か?
まじめに考えると相容れない問題が多いんですよね。私自身の考えを押し出すのがいいのか、問題提起して皆さんのお考えをうかがうのが良いのか。

ややこしいのでいずれ近いうちにm(__)m。
Posted by ごまのはぐさ at 2005年07月18日 21:44
*ごまのはぐささん*

暑くてたまらないですからね〜。ブログの見た目ぐらいは涼しくしたいなあと思いまして。これまで、すごく重たいテンプレだったので、これで表示が少しは速くなったかなぁ。ということで、体調はテンプレいじれるくらいに回復しています。ご心配おかけしました。

ブログで公開しているということは、不特定多数の人の目に入る可能性があるということなので、はっきりとした態度を表現するのはなかなか難しいですね。

ここに書いてくださったこと、自分もまったく同じようなことを思います。栽培については、現在の自分の場合、ここ数年、体調不良のことが多くて、しっかりと管理ができる状態ではないので、新たに何かをたとえば購入して育てるということを控えています。草花は大地に育ててもらって、できる範囲でそれを見に行くというスタイルでやるしかないって感じなのです。

自然な欲望なのかもしれませんが、例えば、希少種を開発予定地でもないような場所から、自宅に持ち帰ることは、やっぱりNGかなと思います。

相反する想いは野草だけでなく園芸種も含めた植物全般に対してという感じかな〜。どの範疇にいれたとしても草は草なんで。なんて悠長なことを言ってもいけませんでしたね。

ごまのはぐささんのササバギンランの記事、大反響だったじゃないですか。ごまのはぐささんのブログなら、みなさんの考えを聞くことはできそうですね!
Posted by hanaboro at 2005年07月19日 02:48
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