秋の野に咲きたる 花を指折り かき数ふれば 七種の花
萩の花尾花葛花 なでしこの花 女郎花また藤袴 朝貌の花
(万葉集 山上憶良)
いろいろと諸説あるのは、やっぱり「朝貌の花」。夏の朝を涼しく彩るヒルガオ科の「アサガオ」は、万葉集に詠まれた時代よりも後になって渡来したとされ、「朝貌」は「キキョウ」だとする説がもっとも一般的。そのほか、「ヒルガオ」や「ムクゲ」も候補にあがっているとか。また、「尾花」はススキの別名でもあります。「〜ナデシコ」という名前の植物はいろいろありますが、単にナデシコといったら「カワラナデシコ」のことをさすことが多いでしょう。「〜ハギ」という名前のハギもたくさんありますが、単に「ハギ」という名のハギはなく、ハギの仲間の総称。
| 萩の花→(例)ミヤギノハギ [宮城野萩] | |
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本州の山野に自生するが、植栽されることが多い。よく枝垂れる。
【花期】7月〜9月 【学名】Lespedeza thunbergii 【科名】マメ科 LEGMINOSAE (FABACEAE) 【撮影】2005/09/19 東京都日野市(植栽) |
| 尾花→ススキ [薄、芒] | |
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日本の秋の野の代表的存在。写真は出穂してすぐのころ。
【花期】8月〜10月 【学名】Miscanthus sinensis 【科名】イネ科 GRAMINEAE (POACEAE) 【撮影】2005/09/29 東京都日野市 |
| 葛花→クズ [葛] | |
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大型のツル植物で茎が太く木質化。葉痕は何かの顔のよう。
【花期】7月〜9月 【学名】Pueraria lobata 【科名】マメ科 LEGMINOSAE (FABACEAE) 【撮影】2005/04/19 東京都日野市 関連記事→クズ、クズ(No.2) |
| 撫子の花→カワラナデシコ [河原撫子] | |
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山野の日当たりのよい場所に生える多年草。淡い紅紫色の花弁の先が細かく裂けて優雅なもの。
【花期】7月〜10月 【学名】Dianthus superbus var. longicalycinus 【科名】ナデシコ科 CARYOPHYLLACEAE 【撮影】2004/09/16 山梨県 |
| 女郎花→オミナエシ [女郎花] | |
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黄色の小さな花が平らな散房花序につく。茎の色が黄色っぽいことも。
【花期】8月〜10月 【学名】Patrinia scabiosifolia 【科名】オミナエシ科 VALERIANACEAE 【撮影】2004/09/23 山梨県 関連記事→オミナエシ、オトコエシ |
| 藤袴→フジバカマ [藤袴] | |
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花序はやや平らな感じの散房状。ヒヨドリバナの仲間。写真はまだ蕾。
【花期】8月〜9月 【学名】Eupatorium japonicum 【科名】キク科 COMPOSITAE (ASTERACEAE) 【撮影】2004/09/19 東京都日野市(植栽) 関連記事→マルバフジバカマ、ヒヨドリバナ |
| 朝貌の花→キキョウ [桔梗] | |
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写真は矮性の園芸品種の1つ。果実は「さく果」
【花期】7月〜9月 【学名】Platycodon grandiflorus(野生種の学名) 【科名】キキョウ科 CAMPANULACEAE 【撮影】2004/09/19 東京都日野市(植栽) |
並べてみると、やっぱり、秋の七草といっても、咲いているのは秋だけとは限らないものも多いですよね。キキョウやフジバカマ、オミナエシ、カワラナデシコ、クズは秋にも咲くけれど夏にも咲いています。ハギの仲間はとても種類が多く、夏から秋にかけて開花するものが多いですが、ヤマハギは6月ごろから咲き始めます。ススキは確かに秋のイメージが強いかな。また、キキョウ、オミナエシ、フジバカマは野生の状態のものは、どこにでもあるというわけではなく稀なもの。カワラナデシコもそれほどふつうに見られるものではなくなっていると思います。
ところで食欲の秋といいますが、七草として詠まれた植物は、春の七草が食べることがメインなのに対して、秋の七草は食用になるのは「クズ」くらいで、観賞することがメイン。芸術の秋ということでしょうかね。
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山上憶良の和歌、素晴らしい響きですね。
はなぶろさんのところは、奥ゆかしいなあと感じ入っています。
上の三つは、少なくとも、家畜の牧草ですね。栄養価に優れ、日本の誇るべき草です。
萩は、マルバハギが和歌にも詠まれ、牧草としても優れています。
万葉の農民は、秋の草刈に忙しくとも、詩を編んだのでしょう。
他の四つの草にも、動物によい効果があるのかも知れませんね。う〜ん。
昔の牧草について、何かありましたら、お願い致します。
マメ科特有の花の形と、萩の咲き方を見ると秋だなあと感じます。
秋の七草、花の写真を撮るようになるまで
ほとんど気にも留めていませんでした。
でも、写真を撮るようになって、
花で季節を感じるっていいな、と。
万葉集も昔学生の頃、読んでいたことがあったのですが、すっかり忘れてました。
改めて詠んでみると、やっぱりいいですね。
秋の七草を牧草的な価値がどれほどなのかっていうふうには、見たことはなかったので新鮮です。山上憶良の和歌に登場する秋の七草は、「秋の野の花を詠める二首」ということなので、やっぱり観賞的な価値がある花として、詠まれているのだと思います。でも、牧草として優れているからこそ人々の生活する身近なところに多くて、それを見ると見た目も美しかったということで、選ばれているのかもしれませんね。
確かにハギは秋って感じがしますね。夏にも見かけるけれど、色合いが何だか秋らしいイメージです。ryoryoさんのお写真、ちょうどいい具合に、きれいに咲いていますね。
いろんなハギの仲間があるのはわかっていても、これまでちゃんと見てこなかったなぁと反省しています。いくつわかるかなってな調子です。
こんにちは〜!
そうですね〜、花で季節を感じるのっていいですね。私の場合だと自分自身は季節の変化に鈍感で、咲いている花を見て、うわっ!もう秋だったのね〜なんて気づかされたりします。
万葉集、ちょっとだけ覚えていたものもすっかり忘れています。この歌もカンニングして、書き写しました〜。秋の夜長に万葉集ってのもよいかもしれませんね。
おはようございます!
我が家でもフジバカマが咲きました〜
すっかり秋ですねヽ(*^^*)ノ
秋の七草はいつまでたっても覚えられず、春の七草はなんとなく詩で覚えていられるのですけど・・。
詳しい解説をありがとうございます。
トラバさせていただいちゃいました!
同じですね〜。実はわたしも春の七草の方がスラスラ出てきます。秋の七草に入っている植物は覚えているのですけれど、和歌が思い出せなくなります。
フジバカマ、結構お庭に植えてらっしゃる方多いですよね〜。本当、すっかり秋ですね。今年は何だか寒くてブルブルしてますよ〜。
ごめんなさい。どうもトラバおうけとりできていないみたいです。管理画面で確認したのですけれど。近頃、調子がよくなくて。これではTB企画への影響が心配。後ほどおじゃましますね。
萩、桔梗、尾花、撫子、女郎花、葛、藤袴、秋の七草
(読み:ハギ、キキョウ、オバナ、ナデシコ、オミナエシ、クズ、フジバカマ)
「ハギ―キキョウ」と、「オバナ―ナデシコ―オミナエシ」のところの音が尻取り的になっているので覚えやすいと思います。
どうもありがとうございます。自分はそちらの方面のことには、とても疎いもので。植物名は覚えられるのですが、和歌の方は苦手なんですよね。