2005年10月05日

秋の七草

10月ともなれば、野山は多くの秋の花でにぎわっています。その秋の花の中でも、特に日本の秋を象徴するものとして、よく「秋の七草」があげられますが、この秋の七草、現在の野山では数の少ないものもあるし、それに秋真っ只中の植物というよりは、夏のイメージがあったりして、ちょっと季節はずれの感もあります。 その秋の七草は、古く万葉集の「秋の野の花を詠める二首」に登場した7種類の植物のことですけれど、何はともあれ、秋には秋の七草を愛でるというのも自然な流れなのかもしれませんね。
秋の野に咲きたる 花を指折り かき数ふれば 七種の花

萩の花尾花葛花 なでしこの花 女郎花また藤袴 朝貌の花

(万葉集 山上憶良)

いろいろと諸説あるのは、やっぱり「朝貌の花」。夏の朝を涼しく彩るヒルガオ科の「アサガオ」は、万葉集に詠まれた時代よりも後になって渡来したとされ、「朝貌」は「キキョウ」だとする説がもっとも一般的。そのほか、「ヒルガオ」や「ムクゲ」も候補にあがっているとか。また、「尾花」はススキの別名でもあります。「〜ナデシコ」という名前の植物はいろいろありますが、単にナデシコといったら「カワラナデシコ」のことをさすことが多いでしょう。「〜ハギ」という名前のハギもたくさんありますが、単に「ハギ」という名のハギはなく、ハギの仲間の総称。

萩の花→(例)ミヤギノハギ [宮城野萩]
ミヤギノハギ Lespedeza thunbergii 本州の山野に自生するが、植栽されることが多い。よく枝垂れる。
【花期】7月〜9月
【学名】Lespedeza thunbergii
【科名】マメ科 LEGMINOSAE (FABACEAE)
【撮影】2005/09/19 東京都日野市(植栽)



尾花ススキ [薄、芒]
ススキ Miscanthus sinensis 日本の秋の野の代表的存在。写真は出穂してすぐのころ。
【花期】8月〜10月
【学名】Miscanthus sinensis
【科名】イネ科 GRAMINEAE (POACEAE)
【撮影】2005/09/29 東京都日野市



葛花クズ [葛]
クズ Pueraria lobata 大型のツル植物で茎が太く木質化。葉痕は何かの顔のよう。
【花期】7月〜9月
【学名】Pueraria lobata
【科名】マメ科 LEGMINOSAE (FABACEAE)
【撮影】2005/04/19 東京都日野市

関連記事→クズクズ(No.2)


撫子の花カワラナデシコ [河原撫子]
カワラナデシコ Dianthus superbus var. longicalycinus 山野の日当たりのよい場所に生える多年草。淡い紅紫色の花弁の先が細かく裂けて優雅なもの。
【花期】7月〜10月
【学名】Dianthus superbus var. longicalycinus
【科名】ナデシコ科 CARYOPHYLLACEAE
【撮影】2004/09/16 山梨県



女郎花オミナエシ [女郎花]
オミナエシ Patrinia scabiosifolia 黄色の小さな花が平らな散房花序につく。茎の色が黄色っぽいことも。
【花期】8月〜10月
【学名】Patrinia scabiosifolia
【科名】オミナエシ科 VALERIANACEAE
【撮影】2004/09/23 山梨県

関連記事→オミナエシオトコエシ


藤袴フジバカマ [藤袴]
フジバカマ Eupatorium japonicum 花序はやや平らな感じの散房状。ヒヨドリバナの仲間。写真はまだ蕾。
【花期】8月〜9月
【学名】Eupatorium japonicum
【科名】キク科 COMPOSITAE (ASTERACEAE)
【撮影】2004/09/19 東京都日野市(植栽)

関連記事→マルバフジバカマヒヨドリバナ


朝貌の花キキョウ [桔梗]
キキョウ Platycodon grandiflorus 写真は矮性の園芸品種の1つ。果実は「さく果」
【花期】7月〜9月
【学名】Platycodon grandiflorus(野生種の学名)
【科名】キキョウ科 CAMPANULACEAE
【撮影】2004/09/19 東京都日野市(植栽)



並べてみると、やっぱり、秋の七草といっても、咲いているのは秋だけとは限らないものも多いですよね。キキョウやフジバカマ、オミナエシ、カワラナデシコ、クズは秋にも咲くけれど夏にも咲いています。ハギの仲間はとても種類が多く、夏から秋にかけて開花するものが多いですが、ヤマハギは6月ごろから咲き始めます。ススキは確かに秋のイメージが強いかな。また、キキョウ、オミナエシ、フジバカマは野生の状態のものは、どこにでもあるというわけではなく稀なもの。カワラナデシコもそれほどふつうに見られるものではなくなっていると思います。

ところで食欲の秋といいますが、七草として詠まれた植物は、春の七草が食べることがメインなのに対して、秋の七草は食用になるのは「クズ」くらいで、観賞することがメイン。芸術の秋ということでしょうかね。

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posted by hanaboro at 18:41| 東京 🌁| Comment(10) | TrackBack(2) | 花後図鑑 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
こんばんは。
山上憶良の和歌、素晴らしい響きですね。
はなぶろさんのところは、奥ゆかしいなあと感じ入っています。

上の三つは、少なくとも、家畜の牧草ですね。栄養価に優れ、日本の誇るべき草です。
萩は、マルバハギが和歌にも詠まれ、牧草としても優れています。
万葉の農民は、秋の草刈に忙しくとも、詩を編んだのでしょう。

他の四つの草にも、動物によい効果があるのかも知れませんね。う〜ん。

昔の牧草について、何かありましたら、お願い致します。
Posted by U-1 at 2005年10月06日 01:09
偶然今日、「ミヤギノハギ」の画像を掲載したので、TBさせていただきたいと思いました。

マメ科特有の花の形と、萩の咲き方を見ると秋だなあと感じます。

Posted by ryoryo at 2005年10月06日 01:40
こんにちは!
秋の七草、花の写真を撮るようになるまで
ほとんど気にも留めていませんでした。
でも、写真を撮るようになって、
花で季節を感じるっていいな、と。
万葉集も昔学生の頃、読んでいたことがあったのですが、すっかり忘れてました。
改めて詠んでみると、やっぱりいいですね。
Posted by asuka at 2005年10月06日 10:34
*U-1さん*

秋の七草を牧草的な価値がどれほどなのかっていうふうには、見たことはなかったので新鮮です。山上憶良の和歌に登場する秋の七草は、「秋の野の花を詠める二首」ということなので、やっぱり観賞的な価値がある花として、詠まれているのだと思います。でも、牧草として優れているからこそ人々の生活する身近なところに多くて、それを見ると見た目も美しかったということで、選ばれているのかもしれませんね。
Posted by hanaboro at 2005年10月06日 12:39
*ryoryoさん*

確かにハギは秋って感じがしますね。夏にも見かけるけれど、色合いが何だか秋らしいイメージです。ryoryoさんのお写真、ちょうどいい具合に、きれいに咲いていますね。

いろんなハギの仲間があるのはわかっていても、これまでちゃんと見てこなかったなぁと反省しています。いくつわかるかなってな調子です。
Posted by hanaboro at 2005年10月06日 12:48
*asukaさん*

こんにちは〜!
そうですね〜、花で季節を感じるのっていいですね。私の場合だと自分自身は季節の変化に鈍感で、咲いている花を見て、うわっ!もう秋だったのね〜なんて気づかされたりします。

万葉集、ちょっとだけ覚えていたものもすっかり忘れています。この歌もカンニングして、書き写しました〜。秋の夜長に万葉集ってのもよいかもしれませんね。
Posted by hanaboro at 2005年10月06日 12:54
hanaboroさん

おはようございます!
我が家でもフジバカマが咲きました〜
すっかり秋ですねヽ(*^^*)ノ

秋の七草はいつまでたっても覚えられず、春の七草はなんとなく詩で覚えていられるのですけど・・。

詳しい解説をありがとうございます。
トラバさせていただいちゃいました!
Posted by すぅ at 2005年10月18日 06:48
*すぅさん*

同じですね〜。実はわたしも春の七草の方がスラスラ出てきます。秋の七草に入っている植物は覚えているのですけれど、和歌が思い出せなくなります。

フジバカマ、結構お庭に植えてらっしゃる方多いですよね〜。本当、すっかり秋ですね。今年は何だか寒くてブルブルしてますよ〜。

ごめんなさい。どうもトラバおうけとりできていないみたいです。管理画面で確認したのですけれど。近頃、調子がよくなくて。これではTB企画への影響が心配。後ほどおじゃましますね。
Posted by hanaboro at 2005年10月18日 10:27
山上憶良の和歌では少し覚え難い秋の七草の名前を並べた短歌があります。

萩、桔梗、尾花、撫子、女郎花、葛、藤袴、秋の七草

(読み:ハギ、キキョウ、オバナ、ナデシコ、オミナエシ、クズ、フジバカマ)

「ハギ―キキョウ」と、「オバナ―ナデシコ―オミナエシ」のところの音が尻取り的になっているので覚えやすいと思います。
Posted by へぼ歌人 at 2005年10月30日 21:23
*へぼ歌人さん*

どうもありがとうございます。自分はそちらの方面のことには、とても疎いもので。植物名は覚えられるのですが、和歌の方は苦手なんですよね。

Posted by hanaboro at 2005年10月31日 10:24
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ミヤギノハギ
Excerpt: 萩は、秋の代表的な花。丸葉もあります(マルバノハギ)。04.09.11撮影:追分
Weblog: 四季を感じて
Tracked: 2005-10-06 01:41


Excerpt: 数種あるが、いずれも比較的よく似た外見である。背の低い落葉低木ではあるが、木本とは言い難い面もある。茎は木質化して固くなるが、年々太くなって伸びるようなことはなく、根本から新しい芽が毎年出る。直立せず..
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